遺跡群詳細

よしこふんぐん(65き)

吉古墳群(65基)

遺跡番号
A-101 
種別
古墳 
時代
古墳 
地区
若槻 
地図

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解説
 長野市北部の田子池の北側、北カウラフ一帯に所在する群集墳で、飯綱町と境を接する三登山東南麓のテラス状に発達した丘陵上及び山麓斜面に立地しています。およそ12haの範囲に98基が分布しており、うち20基ほどが石積み墳丘の古墳になります。
 分布調査により98基の古墳が数えられましたが、現状で確認できないものや、昭和53年(1978)ごろに湮滅した15・16号古墳などもあり、現存数は明らかではありません。これらの古墳は地形的に四群に大別されています。
 発掘調査された古墳は、2・3・8・31・32・33・61・62・72・75号古墳の10基を数えます。大正4年(1915)に発掘されたとの記録もありますが、昭和9年(1934)に栗岩英治氏が報告した、一墳双在の合掌石棺の調査が最初です。昭和34年(1959)には、当時柳町中学校教諭の五十嵐幹雄氏が2号古墳と3号古墳を発掘しています。この調査で3号古墳の横穴式石室奥壁に合掌している人物像の線刻が確認され、装飾古墳の一例として報告されました。その後米山一政氏の指導のもと、長野吉田高校地歴班によって継続的な分布・測量・発掘調査が行われました。
 【3号古墳】東西10.16m、南北8.8 m、高さ3 mを測る横穴式石室を埋葬主体とする後期円墳です。石室の全長4.4 m、玄室の長さ2.2 mを測り、天井石は残存していませんでした。奥壁には高さ1.3 mの鏡石を据え、中央には合掌している人物像らしき線刻画が描かれています。副葬品は確認されていませんが、墳丘上から土師器や須恵器の小破片が出土したとの記述があります。
 【31号古墳】東西16.8 m、南北15.8 m、高さ2.4 mの規模をもつ盛土円墳です。埋葬主体として合掌形天井の箱形石棺が2棺並列しており、南棺の規模は長さ1.85 m、幅60cm、北棺は長さ1.75 m、幅55cmを測り、両方とも床面に板石を敷いています。南棺からは直刀2本と馬具の引手(ひって)と銜(はみ)、砥石が出土しています。
 【33号古墳】33号古墳の調査成果は、雑誌『信濃』にも報告されています(ただし名称は別番号の3号墳として報告されています)。直径約13 m、高さ約3 mの円墳で、31号古墳同様2棺並列の合掌形天井をもつ箱形石棺を埋葬主体とします。北棺はすでに多くが破壊されていましたが、南棺は長さ2.3m、幅40cm、深さ45cmで、天井石が一枚残存していました。副葬品として直刀3本、鉄鏃9本のほか、土師器の小片があります。
 【75号古墳】傾斜地を利用した横穴式石室墳です。土石混合墳とされていますが、横穴式石室の構築に関わる墳丘内埋没石組みが露出した盛土墳の可能性が考えられます。直径15m、高さは山側で2 m、谷側で4 mを測り、玄室の長さ3.4 m、幅2.5 m、羨道の長さ1m以上で天井石はありません。奥壁に鏡石をもちいず四段に積みあげ、両側壁は持ち送りが顕著です。床面の敷石の隙間から、勾玉11点、管玉1点、切子玉13点、棗玉6点、丸玉38点、小玉17点が出土しています。このほか耳環10個や刀子7本、雲珠や飾金具などの馬具、骨片・歯、北宋銭なども出土しています。

 吉古墳群は、墳丘の直径が10~15mと5 m以下でそれぞれ約4割を占め、10m以下の古墳が約8割という、小規模古墳の群集墳です。5m以下の墳丘規模の古墳については、その実態が明らかではありません。また、およそ20基ほどが石積み墳丘といわれていますが、その多くは横穴式石室を内蔵した盛土墳となる可能性が考えられ、石室の構築と連動して墳丘を高くするために墳丘内に埋没させた石室控積みや石組み列が崩壊・露呈したものと考えられます。千曲川左岸には積石塚古墳が極端に少ないことを考えても、石積み墳丘の古墳は数基程度か、あるいは存在しない可能性すら考えられます。
 31・33号古墳の埋葬主体部は、合掌形天井の箱形石棺が2棺並列して構築されています。一つの墳丘上に複数の埋葬施設、特に合掌形天井を有する箱形石棺が構築される類例としては、大室古墳群の大室谷支群第124・165・176号古墳、北谷支群第338号古墳などがあげられます。また地附山古墳群上池ノ平1号古墳にも、3基の埋葬施設が構築されています。墳丘構築材や主軸方向など多少の差は否めないものの、築造年代の推定に参考となるだろうと思われます。
 それぞれ発掘調査の結果、大室165号古墳は5世紀の中ごろから後半、上池ノ平1号古墳も5世紀後半代が推定されており、31・33号古墳の築造年代もそう前後しない時期と考えてもよいと思われます。
 

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