指定文化財詳細

けんぽんちゃくしょくしゃかさんぞんぞう

絹本著色釈迦三尊像

指定区分
県宝 
地区
長野 
所在
長野市大字長野元善町 
年代
鎌倉時代後半 
指定等年月日
平成7年9月21日
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解説
 本幅は、三尊を一幅の画面におさめる一幅一鋪の形式で、法量は縦96.3㎝、横40.2㎝。最上部に六角笠形の天蓋、中央上段に台座上に坐す釈迦如来、下段左右に騎獅子の文殊菩薩、騎象の普賢菩薩を配した通例の構図をとり、画面中央下段には三足香炉が敷物の上に置かれている。ただし、両脇侍の配置は通例とは異なり、向かって右に普賢菩薩、左に文殊菩薩が配されている。
 釈迦如来は右手を屈臂し、五指を伸ばして施無畏印、左手は腹前、脚上で五指を伸ばして与願印を結ぶ。彩色は悉皆金色で、通肩の衲衣には切金文様が施され、肉身線には朱が用いられている。面貌は輪郭が角張り、切れ長の目は目尻が吊り上がりやや厳しい。台座は蓮弁五段葺の蓮華座、六角形五段の框座で、釈迦如来坐像の背面には背もたれが付されている。
 文殊菩薩は外向きの獅子上の蓮華座に坐し、両腕を屈臂し如意を執る。彩色は悉皆金色で、着衣部には切金文様が認められる。また、普賢菩薩も外向きの象上の蓮華座に坐し、両腕を屈臂し蓮茎を執る。肉身部は白色彩で、着衣部には金彩の上に切金文様が施されている。
 画面の彩色は悉皆金色の三尊を中心に、蓮華座、光背および框座、香炉などに賦彩が施されるなど、画面全体は寒色系の配色で統一されている。
 本画像は既述のように、如来の体躯の充実した量感のある描写、画面が緑系の色調で統一された地味な配色、香炉の敷物の描写に見られる画面の空間処理の工夫、着衣部の切金による緻密な表現、如来の背もたれの珍しい表現などに特徴が認められ、内容的に充実した優品である。
 また、本画像は、現状剥落の痕跡は確認されるが、大きな損傷や後世の補筆も認められず、元容をよくとどめており、保存状態は良好である。
 製作年代は鎌倉時代末期から南北朝時代にかけてと考えられ、県下には、鎌倉時代に遡る仏画の伝存はきわめて少なく、その中でも釈迦三尊の画像は、現時点では本件以外には確認されず、貴重な遺例といえる。
 善光寺本坊大勧進は天台宗の密教寺院で、同じく浄土宗の善光寺本坊大本願とともに善光寺の歴史にかかわり、古来その信仰を実際に支え今日に至っている。現在本寺には、本画像の他にも中世に遡る優れた仏画が数多く、これらの仏画は、いずれも信濃の善光寺信仰を、今日まで隆盛させてきた大勧進の足跡を示す貴重な証である。