- 解説
- 長野市から上水内郡飯綱町に通じる旧北国街道の田子の北端から、西北に山道を登ったところが山千寺である。この集落の上手に山千寺観音堂がある。山千寺は、戸隠山顕光寺の末寺であったが、明治維新ののち廃滅した。
像高29.7㎝。髪は単髻(①たんけい)、毛筋はまばら彫りで、垂髪(すいほつ)は両肩にかかる。三面(②さんめん)頭飾(とうしょく)の正面に如来坐像の化仏(けぶつ)を浮き彫りにし、その左右の面には蕨手(わらびで)文様を刻む。胸飾(きょうしょく)は中央と左右に垂らして、それぞれに花飾りを付けている。天衣(てんね)は両肩から垂れて両ひじにかかり、さらに足元の台座の蓮肉上にまで届くが、両ひざ下の一部を欠失している。
台座は蓮華座で、胡桃(くるみ)形の返花(かえりばな)の下に八角框(かまち)座を付け、その上面に波形文様を、側面に格狭間(こうざま)を刻んでおり、仏体とともに美しい装飾を施している。
この像の大きな特徴は、体躯(たいく)の比率が異様なことで、体に比して顔が大きく、また手足の大きいことも注目される。
写実を離れた面貌、口元に微笑をたたえたところ、衣文の形などに飛鳥仏(あすかぶつ)の面影を残している。
見事な作で、県内最古の像としても最も珍重すべきものである。
注① 単髻(たんけい)・・・・・・髪を二束に束ねて髻(もとどり)にしたもの。
注② 三面(さんめん)頭飾(とうしょく)・・・・頭部の正面および左右両側の三面に宝飾を付けた宝冠。白鳳時代の菩薩像の一特徴にあげられる。
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