- 解説
- 大室176号墳は大室谷の中ほど、標高465m付近に位置し、「大室古墳群大室谷支群ムジナゴーロ単位支群」と呼ばれる古墳グループに属しています。墳丘は石のみを積み上げた積石墳丘で、直径23mの円墳とされています。現在のところ、大室古墳群内では直径が20mを超える積石塚古墳は確認されていなく、本墳は大室古墳群中最大規模の積石塚古墳となります。さらに緩斜面地に墳丘が築造されているため、斜面下方側からは墳丘の高さが一層強調され、非常に大きな石山という印象を見る者に与えます。
墳丘の現況は、西半部はよく残っていますが、東半部はV字形に近く、大きく抉られたような不自然な形をしています。地元には昭和26年(1951)の春に林道を建設するために本墳の墳丘を一部取り去ったところ、埋葬施設の側壁石が倒れ、鉄鏃が6本出土したという記録が残っています。墳丘東半部の抉られたような不自然な形は記録にあるとおり墳丘の一部が取り去られた結果と考えられます。
埋葬施設は墳丘の南西側で開口した合掌形石室が一基確認されています。天井石はすでに崩壊し、前後1枚ずつが倒れた状態で残っているにすぎませんが、2対2組の4石で合掌形天井が構築されていたと考えられます。天井は崩壊していましたが、長さ約2.0m、幅約0.9mを測る箱形石棺状の下部構造は完存しています。特に石室の床面には床石が使用され埋まっていませんでしたが、副葬品等が出土したという伝承は伝えられていません。
この開口する合掌形石室は墳丘の南西側に著しく偏って位置していて、ほかにも埋葬施設があると考えられます。前記したように地元の記録には墳丘を取り去った際に埋葬施設の側壁石が倒れたとありますが、墳丘東側には合掌形石室に用いられたとみられる大型の石材が確認でき、もう一基合掌形石室があったことが確実です。ただし、この合掌形石室も南東側に偏っていて、墳丘中心付近にはさらに別の埋葬施設が存在する可能性が想定されます。
本墳の発掘調査は史跡指定以前(平成9年以前)にはまったく実施されていませんでしたが、史跡大室古墳群第Ⅱ期整備事業の着手に伴い平成26年(2014)から継続的に実施しています。現在は墳丘の周囲にトレンチを設定して、墳丘形態や墳丘規模の確認を行っています。出土遺物がほとんどないため、築造時期は未だ確定できませんが、概ね五世紀後半代を中心とした時期に築造されたと考えられます。
今後は積石墳丘内の調査も実施する予定ですので、墳丘や破壊された合掌形石室の構造、未確認の埋葬施設の確認、築造時期の確定などが期待されます。
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